飼い主様が愛犬のドッグフードを選ぶとき、パッケージ裏の「成分表示」に目を通されることと思います。タンパク質は何%か、脂肪は、と。でも実は、その表示のなかに、健康にとても大切な「ある数値」が載っていないことをご存じでしょうか。
それが「糖質(炭水化物)」です。日本でも、アメリカでも、ヨーロッパでも——世界のどの国のルールでも、ドッグフードのラベルに糖質を表示する義務はありません。健康を左右する数値なのに、飼い主様が知るすべがないのです。
この記事では、犬と猫の体のつくりの違いから、世界のフード基準「AAFCO」と「FEDIAF」、表示されない糖質の計算方法、そしてアンベルソが取り扱う7ブランドの糖質を実際に計算した比較表まで、順を追ってやさしくご説明します。これは、アンベルソのフード選びの土台となる「厳選基準」のお話です。

1. まず知ってほしい。犬と猫は「体のつくり」が違います
糖質の話に入る前に、大前提となる大切なことがあります。それは、適切な栄養バランスは動物の種類によって異なるということ。犬と猫は、同じペットでも体のつくりがまるで違います。
猫は「真性肉食動物」— 自然の食事は糖質2〜12%
猫は真性肉食動物(オブリゲート・カーニボア)です。野生の猫は小動物を丸ごと食べて暮らしており、その自然の食事に含まれる糖質は、カロリー比でわずか2〜12%ほど。猫はもともと糖質をあまり必要としない体なのです。
実際、猫は糖質を分解する仕組みが犬より控えめで(唾液にデンプン分解酵素を持たないなど)、獣医栄養学の見解では、健康な猫の食事はカロリー比で40〜50%を超えないことが望ましいとされています。
犬は「雑食寄りの肉食動物」— 糖質もある程度は活かせる
一方、犬はオオカミから家畜化される長い歴史のなかで、デンプンを分解する遺伝子(アミラーゼ)を増やして適応してきました。人のそばで暮らすうちに、穀物やいも類も消化できる体になっていったのです。
そのため犬は、適切に加熱された糖質を効率よく消化でき、乾物あたり30〜60%程度までなら健康上の問題は報告されていません。猫よりも糖質への許容度が広いのが犬の特徴です。
大切なのは「低ければ良い」でも「高いから悪い」でもないということ
ここが、この記事でいちばんお伝えしたいポイントです。糖質は少ないほど良いわけでも、多いから即ダメというわけでもありません。最新の獣医栄養学では、通常の市販フードに含まれる量の炭水化物が、肥満や糖尿病の直接の原因だという証拠は確認されていません。肥満の本当の要因は、むしろカロリーの摂り過ぎや運動不足です。
大切なのは、その子(犬なのか猫なのか、そしてその子の体質)にとって、糖質が適正なゾーンに収まっているか。糖質は「良し悪しの判定」ではなく、フードの品質を見るための“ひとつの窓”だと考えてください。

2. 世界の“ものさし”AAFCOとFEDIAF、そして表示されない糖質
ペットフードの栄養基準は、米国AAFCOと欧州FEDIAFが世界二大主流
ペットフードの栄養基準には、世界に二つの大きな柱があります。米国のAAFCO(米国飼料検査官協会)と、欧州のFEDIAF(欧州ペットフード工業連合会)です。フードのパッケージでよく見る「総合栄養食(Complete & Balanced)」という表示は、このどちらかの基準を満たしていることを意味します。
興味深いのは、この二大基準がどちらも「糖質(炭水化物)の最低必要量」を定めていないこと。犬も猫も、体内でブドウ糖を自ら作り出せる(糖新生)ため、糖質は“必須栄養素”ではない、という考え方に基づいています。
だから、ラベルに糖質は載りません
日本のドッグフードで表示が義務づけられている成分値は、次の5項目だけです。
粗タンパク質 / 粗脂肪 / 粗繊維 / 粗灰分 / 水分
アメリカもヨーロッパも同様に、糖質はラベルの表示対象に含まれていません。つまり世界中どの国の基準でも、糖質は開示されないのです。健康にとても大切な数値なのに、飼い主様が知るすべがない——ここに、私たちが向き合うべき課題があります。
表示されないなら、計算すればいい(差し引き法)
実は糖質は、簡単な引き算でおおよその数値を出せます。100%から、表示されている5項目を差し引いた残りが、糖質に近い数値(専門的には「可溶無窒素物=NFE」と呼びます)になります。
糖質(概算)= 100 −(粗タンパク質 + 粗脂肪 + 粗繊維 + 粗灰分 + 水分)
これはアンベルソが独自に編み出した方法ではありません。AAFCO・FEDIAFの両方が公式に採用している、世界標準の計算式そのものです。世界の誰も——そして日本のどのショップも——ラベルに載せないのなら、正規販売店である私たちアンベルソが計算して、飼い主様にお見せします。
💡 ひとつだけ、正直にお伝えします。ラベルの成分値は「◯%以上/◯%以下」という保証値のため、この糖質もあくまで“概算”です。計算上、可溶性の食物繊維などを含むため、実際の糖質より少し高めに出る傾向があります(この点はTufts大学やFEDIAFも同様に注意を促しています)。ですので、細かい順位ではなく「だいたいの傾向」としてご覧ください。

3. アンベルソ取扱いドッグフード7ブランドの糖質を、実際に計算しました
それでは、アンベルソが取り扱う7つのドッグフードブランドについて、各メーカー公式サイトの成分値をもとに、代表商品の糖質を実際に計算してみましょう。
水分量の異なるフード(ウェット・エアドライ・ドライ)を公平に比べるため、水分を除いた中身で比較する「乾物換算」の数値も併記しました。そして私たちのお約束として、糖質が高めに出たものも、同じものさしで正直に掲載します。

| ブランド/代表商品 | タイプ | 主なタンパク源 | 粗タンパク | 粗脂肪 | 粗繊維 | 粗灰分 | 水分 | 糖質 (製品そのまま) |
糖質 (乾物換算・比較用) |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| ジウィピーク|エアドライ ラム | エアドライ | ラム(単一タンパク) | 38% | 30% | 3% | 12% | 14% | 約3.0% | 約3.5% |
| テラカニス|グレインフリー 鹿 | ウェット | 鹿 | 10.0% | 4.0% | 0.8% | 1.1% | 80.6% | 約3.5% | 約18.0% |
| オリジン|オリジナル | ドライ | 鶏・七面鳥・魚・卵 | 38% | 18% | 5% | 9% | 12% | 約18.0% | 約20.5% |
| キアオラ|ラム&サーモン | ドライ | ラム・サーモン | 30% | 17% | 4% | 10% | 10% | 約29.0% | 約32.2% |
| ペットカインド|トライプドライ グリーンビーフトライプ&バイソン |
ドライ | 牛トライプ・バイソン・七面鳥 | 32% | 16% | 4% | 8.5% | 10% | 約29.5% | 約32.8% |
| アンブロシア|ラム | ドライ | ラム(単一タンパク) | 27% | 17% | 4.5% | 10.1% | 9.0% | 約32.4% | 約35.6% |
| エンパイア|プライム・アダルト | ドライ | ラム(単一タンパク) | 24% | 15% | 3.5% | 7.2% | 10% | 約40.3% | 約44.8% |
※成分値は各ブランド公式サイト等の保証成分値(粗タンパク質・粗脂肪は「以上」、粗繊維・粗灰分・水分は「以下」)に基づく概算。アンブロシアは日本正規輸入元の掲載値。糖質はNFE差し引き法による推定値です。乾物換算は水分を除いた中身での比較値で、水分量が違うフードを公平に比べるための数値です。
この表から見えてくること
査読論文によると、市場の一般的なドライフードの糖質は乾物あたり30〜45%ほどで、高いものでは57%にも達します。この“市場のものさし”と照らし合わせると、アンベルソの7ブランドの位置づけがはっきり見えてきます。
7ブランドはいずれも乾物換算で約3.5〜45%。市場の高糖質帯(およそ50〜57%)に入るものは一つもなく、多くは35%以下に収まっています。エアドライのジウィピークは肉・内臓が96%を占め、ウェットのテラカニス(鹿)も肉主体で、いずれも糖質は極めて低い値。動物性原材料85%のオリジンも低めです。
一方で、単一タンパクのエンパイア プライム(ラム)はやや高め(約45%)に出ています。これは、アレルギーに配慮して鶏や穀物を避け、タンパク源をラムだけに限定した設計だから。与えられるタンパク質が限られる子にとっては、糖質の数字よりも「タンパク源の安全性」が最優先であり、この設計は理にかなっています。数値だけで良し悪しは決まらない——ここも大切なポイントです。
つまりアンベルソが厳選しているのは、市場のなかでも「低〜中糖質」を軸に、犬の適正範囲(30〜60%)に収まるフード。そして、健康な子には低糖質・高タンパクを、アレルギーの子にはタンパク源の安全を——と、その子に合わせて選べる幅を用意しています。これが、アンベルソのフード厳選基準の柱です。
※上記は各ブランドの代表1商品の数値です。同じブランドでも、レシピ(タンパク源)によって糖質は変わります。愛犬に合う一品を選ぶ際は、ぜひ各商品の成分もご確認ください。
4. まとめ:糖質は「品質を見る窓」。適正なゾーンで、安心を。
糖質は世界のどの基準でも表示義務がありません。けれど、差し引き計算をすればちゃんと“見える化”できます。そして大切なのは、低ければ良いのではなく、その子にとって適正なゾーンに収まっているか。糖質は、良いフードを見分けるためのひとつの窓なのです。
アンベルソは、世界二大基準AAFCO・FEDIAFの計算式で糖質を見える化し、低〜中糖質のフードを厳選してお届けしています。飼い主様が「うちの子に、これなら安心して選べる」と感じていただけること——それが私たちの願いです。
よくある質問(FAQ)
ドッグフードの糖質はどう計算する?
糖質(概算)=100−(粗タンパク質+粗脂肪+粗繊維+粗灰分+水分)で求められます。これはAAFCO・FEDIAFが採用する世界標準の差し引き法(NFE)です。あくまで概算で、実際よりやや高めに出る傾向があります。
ドッグフードの適正な糖質量は?
犬は乾物あたり30〜60%程度までは健康上の問題が報告されていません。『低い=良い』ではなく、その子にとって適正なゾーンに収まっているかで見ます。市場の高糖質帯(およそ50〜57%)を避けるのが一つの目安です。

出典・参考文献
本記事の数値・見解は、以下の一次情報および査読文献・公的基準に基づいています。
■ 栄養基準・表示制度
- AAFCO「Calorie Content」(NFE差し引き計算式・炭水化物の最低基準なし):https://www.aafco.org/resources/startups/calorie-content/
- AAFCO「Nutritional Labeling」(保証分析の必須項目):https://www.aafco.org/resources/startups/nutritional-labeling/
- 米国FDA「Complete and Balanced Pet Food」:https://www.fda.gov/animal-veterinary/animal-health-literacy/complete-and-balanced-pet-food
- FEDIAF「Nutritional Guidelines」:https://europeanpetfood.org/self-regulation/nutritional-guidelines/
- FEDIAF「Carbohydrate Expert Review」(2019)(糖質の最低要求なし・NFE式・NFEは過大評価しやすい旨):https://europeanpetfood.org/wp-content/uploads/2022/03/FEDIAF_Carbohydrates-OnlineK.pdf
- ペットフード公正取引協議会「公正競争規約に基づく必要表示事項」(成分値5項目):https://pffta.org/label/required_fair_competition/
- 農林水産省「ペットフード安全法」:https://www.maff.go.jp/j/syouan/tikusui/petfood/
■ 市場の糖質分布・犬猫の栄養科学
- Kępińska-Pacelik & Biel ほか (2023)「乾燥ドッグフードの多量栄養素評価」35製品でNFE 19〜57%DM:https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0034528823003223
- Tufts大学 Petfoodology「The Role of Carbohydrate in Pet Foods」:https://sites.tufts.edu/petfoodology/2021/07/07/the-role-of-carbohydrate-in-pet-foods/
- Tufts大学 Petfoodology「Carb Confusion Part 2」(NFEは真の糖質を過大評価しやすい):https://vetnutrition.tufts.edu/2021/09/carb-confusion-part-2-measuring-carbs/
- Rankovic, Adolphe & Verbrugghe (2019) JAVMA「犬の健康における炭水化物の役割」:https://avmajournals.avma.org/view/journals/javma/255/5/javma.255.5.546.xml
- Laflamme ほか (2022) JAVMA「猫と炭水化物」(自然食2〜12%・上限40〜50%ME等):https://avmajournals.avma.org/view/journals/javma/260/5/javma.21.06.0291.xml
- Verbrugghe & Hesta (2017)「Cats and Carbohydrates: The Carnivore Fantasy?」:https://www.mdpi.com/2306-7381/4/4/55
- Merck Veterinary Manual「Nutritional Requirements of Small Animals」:https://www.merckvetmanual.com/management-and-nutrition/nutrition-small-animals/nutritional-requirements-of-small-animals
■ 各ブランド代表商品の成分値(公式サイト等)
- テラカニス|グレインフリー 鹿(日本公式):https://www.terracanisjapan.com/dogfood/grainfree.html
- キアオラ(日本公式 BACK TO BASICS):https://backtobasics.jp/kiaora/dog-lamb-salmon
- ジウィピーク|エアドライ ラム(日本公式):https://ziwipets.com/ja-jp/products/air-dried-lamb-recipe-for-dogs
- エンパイア|プライム・アダルト(日本公式):https://empirepetfood.jp/products/dog2.html
- アンブロシア(日本公式 Tricco International):https://tricco.i13.bcart.jp/list.php?c_id=44
- ペットカインド|グリーンビーフトライプ&バイソン(日本公式):https://petkind.jp/dogfood/tripedry/tdbi.html
- オリジン(日本正規輸入元 acana.net):https://acana.net/products/orijen-original
本記事の糖質値はアンベルソが上記公式成分値をもとに差し引き法で算出した概算値です。数値は改訂される場合があります。閲覧日:2026年7月。
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